2025.10.03犬の下痢に血が混じるのは危険?考えられる原因や対処法などポイントを解説

犬の便は、健康状態のバロメーターとも言われています。うんちを見るとその日の愛犬の“元気度”を知ることができ、健康的な色の形の整った便がスルッと出てくれると安心です。
でも、血のついた下痢を起こすと不安ですよね。「下痢」と「出血」が起こるのは、一時的に体調を崩したケースもありますが、なかには深刻なケースもあります。
そこで、犬の下痢に血が混じったときに考えられる原因や動物病院を受診する目安を知っておくことが大事です。
今回の記事では、血が混じる犬の下痢についてお伝えしていきます。
犬の下痢に血が混じる場合の症状と見分け方
出血の箇所によって、血の色が変わってきます。便の状態とともに見分け方について見ていきましょう。
鮮やか血が混じる
鮮やかな赤い血なら、肛門付近の炎症・傷による出血が考えられます。肛門付近に傷ができた、大腸や直腸に炎症が起こっていることも多いです。
黒い血が混じる
少し黒ずんだ血が混じったものを「タール便」と言います。出血してから時間が経ち、肛門よりもずっと奥側で血が出たと推測することができます。消化管の上部で起こった出血の可能性が高まります。
ゼリー状の血が混じる
ゼリー状の血が混じる場合は、剥がれた粘膜・粘液が便と一緒に出てきた可能性があります。
犬の下痢に血液が混じる場合に考えられる主な原因

犬に下痢が起こっただけでも心配ですが、“血が混じる”とただ事ではない気がして不安ですよね。次に下痢に血液が混じる場合の主な原因をご紹介します。
ひとつずつ見ていきましょう。
肛門や直腸が傷つき出血した
便秘がひどく、排泄しようとした際に便の塊が肛門内を傷つけ出血することがあります。
下痢の場合は、尖ったものを誤飲して腸内に引っかかって便に血がつくことがあります。
消化器系の病気
消化器がウイルスや細菌などに感染して下痢に血が混じることがあります。感染症は必ずしも重度になるとは限りませんが、気づかずに放置すると重症化する可能性もあります。
寄生虫の感染
鉤虫や鞭虫などの寄生虫に感染し、下痢に血が混じるケースがあります。寄生虫に感染した場合には、下痢のほか、嘔吐や腹痛も見られることが多いです。
これらの症状が同時に起こった場合、早めに検査をすることで重症化のリスクを下げられます。
糞便検査で寄生虫を特定することができるため、お家にあるビニール袋、綺麗な容器などに少し入れて持参すると、その便が受診の際の診断に役立つケースも多いです。
寄生虫の種類によって異なりますが、駆虫薬によって治療をすることができます。
ウイルスや細菌の感染
真っ赤な水のような下痢が起こると、パルボウイルスに感染した可能性もあります。
犬のパルボウイルスは急性ウイルス性腸炎を起こし、腸の細胞・粘膜も破壊され、赤い水様便が出ます。胃液や白い泡混じりの嘔吐も頻繁に起こり、ぐったりすることもあります。
急激に悪化するため、免疫が低く、ワクチン未接種の子犬は注意が必要な感染症です。
また、サルモネラやカンピロバクターなどの細菌感染でも急性の下痢や、腸に炎症が強く表れると血便も起こります。
アレルギー症状
急に食事内容を変えたことで何らかのアレルギー症状が起こって下痢に血が混じることもあります。
ずっと決まったフードを与えているわけではなく、ときどき種類を変えて食べさせるというケースもあるでしょう。
これまで食べさせたことがないフードを与える場合は、体調の異変を観察しながら“少しずつ”切り替えていくことが大切です。
胃潰瘍、腫瘍
胃潰瘍により黒い血が混じった下痢が起こるケースもあります。胃潰瘍の場合は、血便のほか、血が混じる嘔吐や貧血症状が見られることもあります。
また、高齢の犬に多いのは、腫瘍による血便です。肛門付近や腸に腫瘍があると、粘膜が破壊され傷つくため出血するケースも。腫瘍の場合は、出血が継続的に起こるのが特徴で、下痢だけでなく、便秘も交互に起こることもあります。
誤食・誤飲
食べ物ではないものを口にして、それが胃腸を傷つけて出血、血便や下痢の原因となっていることも考えられます。
中毒症状
除草剤がついた草を食べて中毒を起こし、血便・下痢を起こすケースがあります。毒性が強いものだと、嘔吐やけいれんなど深刻な症状も同時に見られるかもしれません。犬の場合、散歩で草むらに行くことも多いため、草を舐めないように観察しておくことも大切です。
また、チョコレートや玉ねぎ、ぶどう、キシリトール、洗剤、タバコ、人間の薬などの誤食で中毒が起き「下痢・出血」が起こることもあります。
ストレスや環境が変わった
人間でも緊張によりお腹が緩くなることがありますよね。犬も何らかのストレスや緊張で、お腹の調子を悪くして下痢になります。
・留守番が長時間、誰もいなくて怖い思いをした
・雷や地震でびっくりした
・引っ越しでお家の様子が変わった
なども犬にとってはストレスです。
腸の動きが活発になり過ぎて下痢を引き起こす可能性もあります。
ただ、病気などが隠されている場合と違い、ストレス性の下痢や血便は「一時的」でおさまるケースも多く見られます。
すぐに受診すべき?こんな症状があったら早めに動物病院に

早めに動物病院を受診した方がいいケースについて見ていきましょう。
出血量が著しく多い
便のなかに大量の血が混じっているのは命にかかわる可能性もあります。すぐに動物病院を受診した方がいいでしょう。
嘔吐をともなっている
少量の血が混じった下痢が1回だけでその後の元気がいつも通りなら様子見をしてもいいケースがあります。しかし、血が混じる下痢だけでなく、「吐く」「ぐったり」と全身症状が起こっていれば、重症化しているかもしれません。
早めに病院を受診することをおすすめします。
子犬や高齢犬
子犬や老犬は抵抗力が弱く、健康体の犬なら軽度になるものが、重症化することがあります。様子見をしているうちに急激に深刻な状態になることも少なくありません。
特に、高齢の犬の場合、体力もかなり低下しています。軽めの症状に見えて様子見したことにより、症状が急激に進むことも少なくありません。
できるだけ早く診察することが大事です。
基礎疾患を持っている犬
基礎疾患を持っている犬の場合、血が混じる下痢によって命の危機をともなうことがあります。
たとえば、がんを患っている犬は粘膜が弱いため、出血が止まりづらい可能性もあるでしょう。
下痢と出血がずっと続いている
下痢がずっと続くと脱水症状を起こします。さらに血も止まらないなら、体はとても深刻な状態です。
一般的に、少量の血が1回だけなら肛門付近に傷がついた可能性もあります。しかし、下痢も出血もずっと続くなら、消化器で出血が止まっておらず危険かもしれません。
できるだけ早く動物病院を受診すべき症状です。
食べ物をまったく食べない、動かない
食べ物や水分をとらない状態で下痢が続くと、急速に脱水症状が進みやすいです。低血糖やや意識が朦朧としたり、ショック状態に陥るケースもあります。食欲がない、元気がない、震えているといった症状があれば、緊急性も高まります。
特に、子犬や老犬、持病のある犬は早めに動物病院を受診すべきでしょう。
呼吸が明らかに普段と違う
下痢や血便で呼吸の乱れが起こっているときも、体が深刻な状態のサインです。
呼吸が速くて浅い、胸で呼吸をしている様子、口をあけてハアハアと苦しそう、呼吸が止まりそうなど、呼吸困難や酸素不足になっている可能性もあります。
特に、舌や歯茎が紫でチアノーゼが見られるときは緊急性も高いです。命に関わる可能性があるため、すぐに病院に連れていくことをおすすめします。
日常でできる犬の血便・下痢の予防と飼い主が守るべきこと

下痢に血が混じると場合によっては緊急性が高まります。そうならないように、できるだけ予防したいですよね。日常的に飼主様ができることをご紹介していきます。
栄養バランスを保つ食生活を
栄養バランスを考えた食生活を送ることは、血便や下痢の予防はもちろん、ワンちゃんの健康につながります。
犬の年齢や体重に合わせ、栄養のあるドライフードを与えてあげると栄養バランスは整います。
甘味料が多くカロリーの高いおやつの場合、基本的には栄養価はほとんど期待できず、逆に健康に影響を及ぼすケースもあるため注意しましょう。
あくまでも“しつけ”や“コミュニケーション”の一環として、与え過ぎないことがポイントです。
ストレスを減らせるように環境の見直しをする
犬はとてもデリケートな動物です。
「散歩したいのにできない」
「飼い主さんと遊びたいのに構ってくれない」
「家族が増えて緊張する」
「食事の時間がバラバラ」
など、自律神経を乱して消化器官に影響を及ぼしかねません。
不規則な生活リズムや運動不足といったストレスを感じて下痢や血便を起こすことがあります。食事の時間・散歩の時間・遊びの時間など生活リズムを整えましょう。
飼主様とのスキンシップやコミュニケーションは、犬にとって大きな安心感につながります。
定期的な健康管理で予防する
日ごろから愛犬の様子を観察する習慣を心がけるのも大切です。感染症対策で予防接種を受けることや、健康診断を受けて血液検査で病気のリスクを知っておくのも予防効果があります。
血便や下痢がみられた場合の正しい対処法・対応まとめ
愛犬に下痢や血便がみられると不安ですよね。
元気があって1回の下痢なら心配もないケースもある一方で、感染症や寄生虫、アレルギー、重大な病気が潜んでいるときは、様子見しても回復しないどころか重症化する恐れもあります。
特に、大量の出血や嘔吐・震えなど元気がなくなっているときは緊急に対処した方がいいこともあります。
夜間に下痢や血便が起こると翌朝まで待って受診を考える飼主様もいらっしゃいますが、それがさらなる悪化をさせる可能性もあります。当院は、東京・横浜・川崎・千葉の京浜エリアで深夜のペット診療(夜間動物病院)を行っています。愛犬の異変で受診をご希望の場合には、お電話にてご予約のうえまずはご来院ください。