2025.10.03犬の呼吸が荒い!?主な原因や異常な呼吸に潜む病気、飼い主ができる健康管理の方法も解説

愛犬の呼吸がいつもより速く、舌を出して口を開いたまま「ハアハア」と苦しそうに見えると不安ですよね。
犬は運動後や緊張などで荒い呼吸になることも多く、“一時的”なものなら心配ないケースもあります。
ただ、いつまでも呼吸が速く荒々しいのは何らかの病気のサインである可能性も考えられます。
今回の記事では、犬の呼吸が荒い原因や、潜んでいるかもしれない病気などをお話していきます。
犬の呼吸が荒い、呼吸が速い原因とは?
犬の呼吸が“荒い・速い”とき、考えられる原因をいくつかご紹介していきます。
原因①:暑さのため、体温調節をしている
暑い日、体温が高くなったときにハアハアと息が荒くなるのは人間と同様に犬にとってとても自然なことです。
たとえば、
・日差しの強い日の散歩で呼吸が荒くなった
・室温が高く、暑さを感じてハアハアと息をしている
などの場合でも、それぞれ「日陰に連れていく」「窓を開ける・エアコンをつけるなどで室温を下げる」と涼しい環境にして呼吸が落ち着くケースなら問題ないことが多いでしょう。
原因②:運動した

ドッグランや走りながらの散歩など、いつもよりも激しく動き一時的に体が酸素不足になると「パンティング」の症状が見られることがあります。
酸素を体内に入れるために本能的に呼吸が速まることは、犬にとって比較的よく見られることです。
運動後、座る・寝るなどで時間の経過とともに呼吸も落ち着き、いつもと変わらずに元気なら問題のないケースが多いでしょう。
原因③:緊張などのストレス
人間も緊張すると「ドキドキ」と心臓の動きが速まることもあるかと思いますが、犬も同じく急な緊張や興奮、ストレスで呼吸が荒くなりやすいです。
たとえば、「知らない人が家にやってきた」「大きな雷の音が聞こえた」「車で見知らぬ場所に行った」などで怖さやストレスを感じ、一時的に呼吸が速くなることもあるでしょう。
また、“緊張”や“ストレス”で呼吸が速まっている場合は、そのほかに「震える」「鼻水が出る」「あくびをする」などの行動が見られるケースもあります。
原因④:病気やケガ
病気やケガなどで体調の悪さから息苦しさを感じている可能性もあります。
考えられるのは、
・心臓や肺などの病気
・誤食や誤飲などで喉が苦しい
・ケガをして痛みを我慢している
などです。
病気やケガが原因で息苦しさを感じている場合、「呼吸が荒い」という症状だけでなく、さまざまな行動を見せることがあるので状態をよく観察することが大事です。
要注意!犬の異常な呼吸が示す重大な病気とその症状一覧
犬に異常な呼吸が表れたとき、もしかしたら緊急性の高い病気が隠されているかもしれません。代表的な病気と症状をご紹介します。
熱中症
熱中症で呼吸が荒くなると口を開けて舌を出し、ハアハアと呼吸をすることで体温を下げようとする「パンティング」という行動が見られます。お水を飲ませたり、休ませるなどで比較的早めに落ち着けば大丈夫なケースも多いです。
ただ、
・ぐったり動かない
・大量のよだれを流している
・ゼーゼー・ヒューヒューという異音がひどい
・長時間苦しそうにパンティングをしている
・嘔吐・下痢をともなっている
・痙攣を起こしている
などの症状があるときは注意しなければなりません。
特に、嘔吐や下痢、痙攣などを起こしている場合は命にかかわる可能性もあります。油断は禁物です。
犬の汗腺は肉球にしかなく、“汗”をかく箇所が限定的。主な体温調整がパンティング行動です。ずっと苦しそうな呼吸をしているときは熱中症が悪化しているかもしれません。
早めに動物病院を受診することが大事です。
気管支炎
犬の誤食や誤飲、ウイルス、ハウスダストによって気管支に炎症を起こすのが「気管支炎」です。炎症によってスムーズな呼吸が難しくなり、酸素を取り込もうと呼吸が速まります。
僧帽弁閉鎖不全症
犬の心臓病で多く見られる病気です。心臓病は、年齢の高まりとともに増える傾向で、特に高齢犬でよく見られます。
この病気になると心臓の弁の閉じ方が不完全になることから、血液が流れづらく逆流することもあります。脳に酸素がうまく運ばれず、呼吸数が著しく増え荒くなる病気です。
僧帽弁閉鎖不全症が進行すると、パンティング行動が頻繁になります。少し動いても息切れしている、疲れやすく動きたがらないなどが主な症状です。
心筋症
心臓の筋肉の異常により心機能が低下し、全身に酸素を運べなくなるのが心筋症です。
心筋症には、
・心臓の筋肉が薄くなり収縮が衰える「拡張型心筋症」
・心臓の筋肉が厚くなり内腔が狭まる「肥大型心筋症」
がありますが、犬の心筋症の多くは前者の拡張型心筋症と言われています。
心筋症は初期症状があまりなく、進行とともに呼吸困難などの症状が見られるようになります。
肺水腫
肺水腫は肺のなかに水分が溜まる病気で、進行すると犬は呼吸しづらく苦しくなります。
肺水腫になった犬は、
・呼吸困難で呼吸が速まる
・咳や鼻水が出る
・体重が減ってくる
などの症状を見せることがあります。
肺水腫は、僧帽弁逆流症や心筋症など心臓の病気が引き金となっているケースも多い傾向です。そのほか、肺炎やアレルギー症状、ケガ、毒物の摂取などで起こることも考えられます。
肺炎
感染症や誤嚥、アレルギーなどによって、肺や気管に炎症を起こす病気です。呼吸がふだんより速くなるほか、咳や発熱、食欲不振、鼻水、チアノーゼ、震えなどの症状が見られることがあります。
重症になると呼吸困難や命の危機もあり得ることから、早急な受診が重要です。
呼吸が荒い犬に多い犬種とは?短頭種や小型犬種特有の問題について
短頭種や小型犬は、身体の特徴から荒い呼吸になることも多いです。
呼吸が浅くなりがちな短頭種

パグやフレンチブルドッグ、シーズー、ペキニーズなど鼻が短い短頭種の場合、ふだんから、いびきのような呼吸音を出すことがよくあります。
気道や鼻の穴の狭さから呼吸がしづらいことから「短頭種気道症候群」という呼吸器疾患を発症しやすいです。
また、短頭種だけにかぎらず、肥満が原因で気道が圧迫されて呼吸しづらくなるケースもあります。
小型犬にありがちな呼吸問題
小型犬は“気管虚脱”のリスクがあります。本来、スムーズに空気が流れるはずである気管がつぶれて圧迫され、呼吸しづらくなる呼吸器疾患です。
気管虚脱になると空気が肺に送られず、呼吸時に「ガーガー」という音を鳴らし、苦しそうな呼吸をします。
特に、小型犬ではありがちな病気で、チワワやヨークシャーテリア、トイプードル、バグ、ポメラニアン、シーズーなどで発症が多い傾向です。
愛犬の呼吸異常を見逃さないために!飼い主が普段からできる健康管理方法
異常な呼吸は何らかの病気のサインとなっていることもあります。飼い主さんが普段からできる健康管理の対策についていくつかご紹介します。
ふだんの呼吸回数をチェックしておく
呼吸の異変を知るためには、犬の平均的な呼吸回数を知っておくことがポイントです。就寝中など安静にしているとき、犬の胸、あるいはお腹が上・下に1分間に何回動いているかを観察しておきましょう。
正常時の呼吸数を知ることで、「呼吸が速いかもしれない」という判断時に役立ちます。
正常な呼吸と異常な呼吸の違いを知る
犬が正常な呼吸をする際、「ゼーゼー」「ハアハア」「ヒューヒュー」といった雑音が混じることはありません。静かに落ち着いた表情で呼吸をします。
一方、「運動をした後・暑い日の散歩・飼い主さんと遊んで興奮中」などで体温が上昇すると“パンティング”といって舌を出して呼吸をして体温を下げる行動が見られます。
ただ、運動によって呼吸が速まるのは特に問題がないケースが多く、注意したいのは「思い当たる原因がないのに呼吸が苦しそう」というケースです。
夏の散歩は涼しい時間帯に

犬にとって、夏場の散歩は過酷な状況というケースも多いです。特に、街中での散歩の場合、地面からの距離が近い犬にとって高温のアスファルトによる“照り返し”が大きな影響を与えやすいと考えられています。
人間よりも一層暑さを感じるので、ハアハアと呼吸が荒くなるのです。
暑い時期の留守番は室温を快適に保つ
犬の熱中症は、暑い時間帯の散歩などが原因と思われがちですが、実は「エアコンがついていない部屋での留守番時」なども起こるリスクがあります。
特に、留守番が長時間に及ぶ場合には、エアコンを稼働させるなどして部屋を適温に保つ工夫が大事です。
犬の呼吸異常で動物病院を受診すべき症状と受診時に獣医師に伝えるべき情報とは
原因を取り除いたり、休息をとったら回復するようなら問題ない可能性があります。しかし、ふだんとは違った異変があったら早めの受診をすることで病気の早期発見ができるかもしれません。
受診すべき症状とは?
パンティングは犬にとってよくある症状ですが、「早く受診すべきケース」があります。
・ずっとハアハアと呼吸している
・肩で苦しそうな呼吸をしている
・咳が止まらない
・チアノーゼが見られる
・ゼーゼーなどの異音がある
・伏せや横になることができない
・呼んでも反応がない
・震えている
・嘔吐や下痢をしている
などの症状がある場合、通常のパンティングとは違い、病気が原因かもしれません。
「ふだんとは明らかに違う呼吸」と感じた場合には、すぐに動物病院を受診することをおすすめします。
受診前にまとめておきたい情報
受診をする際に、
・いつから異変が続いているか
・荒い呼吸のほか、どんな症状があるか
・呼吸の回数はどのくらいか
・呼吸時に異音はあるか
愛犬の症状を整理しておくのもポイントです。
また、異常が感じられた呼吸の様子は、スマホなどで動画撮影しておくことで受診の際に役立つ可能性があります。
まとめ
運動や暑さ、興奮、ストレスなどで「ハアハア」と呼吸をするのは、パンティング行動といって犬によくある行動のひとつです。生理的なものであり、原因を取り除いたり、少し休むと落ち着くことも多いでしょう。
ただ、必ずしも様子見してもいいとは言えず、なかには病気が進行したことにより呼吸が速くなっているケースもあります。
しばらくしても呼吸が落ち着かない、ぐったりしているなどの場合は、緊急性が高い病気のサインとも考えられます。
夜間に症状が起こると受診をためらうかもしれませんが、翌朝まで放っておくとさらに悪化する可能性もあります。
当院は、東京・横浜・川崎・千葉の京浜エリアで深夜のペット診療(夜間動物病院)を行っています。夜間に起こる愛犬の異変で受診をご希望の場合には、お電話にてご予約のうえまずはご来院ください。